AIが飛躍的な進歩を遂げ、AIが組み込まれたサービスを様々な場所で目にしたり触れたりする機会が多くなりました。既にAIを導入している企業やこれから導入を検討している企業も多いと思います。新規にAIを導入する場合、どのような業務で活用すれば効果的なのか、AIにはどんなことができ、どんなことができないのかなど、AI導入を検討している企業や有効な使い方を迷っている方の参考になる情報をご紹介いたします。
AIとは何か?
ここ数年、耳にしたり目にしたりする機会が多いAIの基礎的知識について、まずおさらいしましょう。AIとは「Artificial Intelligence」の略語で、日本語に訳すと「人工知能」です。わかりやすく言うと、コンピューターを使って人間の知能を再現させる技術です。AIには機械学習や深層学習と言った機能が備わっています。
AIはコンピューター技術によるプログラムで動き、機械学習によって大量のデータを収集し、プログラムが処理する仕組みです。人間の脳を同じようなプログラミングを施せば、人間の判断に近い処理の再現が可能です。
AIにできること、できないこと
AIは万能ではありません。できないこともあります。ここでは、AIにできることとできないことをそれぞれご紹介します。
AIにできること
AIは動画、画像、音声など大量のデータを処理できます。収集して蓄積した大量のデータをプログラミングに活用することで、測定や異常の検知が可能になります。Aiの異常検知は人間の能力を遥かに凌ぎ、異常を検知すれば機械の抑制が行えます。大量のデータを分析することで、法則や傾向を導き出す能力も備わっています。
AIにできないこと
AIには想像力が必要な作業をすることはできません。AIは学習した内容から認識や予測することまでが対応できる範囲なので、人間のように0から何かを考えて生み出すようなことはできません。あくまでも人間が与えたデータの範囲内の作業が可能です。クリエイティブな作業や創造性が求められる生産的な作業はできないのです。
また、人間の感情やその場の空気を読むような作業もできません。パターン化された回答や人間の顔などを判断して部分的に感情を読み取ることはできますが、実用化には至っていません。
日本におけるAIの導入状況
IT技術はAIに代表される先進技術は、21世紀の今驚くほどの進化を遂げています。その中で、経済産業省は2025年までに中小企業がAI導入によって得られる経済的効果を11兆円と試算し、積極的なAIの導入を支援しています。しかし、世界の中で日本はAIの導入の面では、大きく遅れを取っています。現状では中小企業におけるAIの導入は思うように進んでおらず、導入していても思うような成果を出せていない企業もあります。
日本におけるAI活用事例
AIには機械学習、ディープラーニング、予測分析、自然言語処理など様々な機能があります。それらは今後、数多くの業界で必要不可欠になっていくことが予想されています。しかし、AIを導入すればそれでよいわけではありません。導入した後の成果が求められます。
ここからは既にAIを導入し、成果を上げている事例や身近なAIの活用事例をご紹介します。是非参考にしていただき、自分の企業のどのような業務に、またどのような形で導入すれば成果が出せるのか、考えてみてください。
身近なAIの事例
まずは、私達の生活の中で身近に活用されているAIの事例をご紹介します。
無人レジ
無人レジは、AIの画像認識を活用し、前もってバーコードや画像、文字を登録して、商品を認識させることにより清算するシステムです。清算担当の従業員の削減ができることがメリットです。
車の自動運転
車の自動運転は、各種センサーが様々な情報を認知し、AIが認知・判断・制御を行います。自動車メーカーがこぞってAIを活用し、車の自動運転の開発に取り組んでいます。画像や音声などから認識された情報を分析し、人間と同じ程度の認識水準が可能となるよう開発が進み、実装の目前まで来ています。活用する1番のメリットは、交通事故の減少です。
掃除ロボット
ルンバに代表される掃除ロボットにもAIは内蔵されています。センサーによって機械学習したAIからの指示で、障害物を避けて掃除する仕組みです。部屋の造りや家具の配置などをデータとして設定すれば、同じところを何度も通ることなく効率的に掃除することが可能です。活用するメリットは、起動した状態であれ常時掃除されている状態を保つことができるということです。
自動音声翻訳・音声サービス
自動音声翻訳は、案内窓口や道案内など多様な言語を用いたコミュニケーションが必要な場所で活用されています。AIが音声認識を行い、聞き取った音声をテキストへ変換し、変換したテキストを機械翻訳が翻訳し、再び音声として出力するシステムです。
「Siri」や「Alexa」に代表される音声サービスは、音声認識アシスタント機能が使われています。AIがユーザーの声を認識することで、会話を楽しんだり電気のスイッチをONにしたりすることができます。機械学習した内容を再現するだけではなく、ユーザーとのやり取りを学習するので、学習を重ねることによりユーザーの要望に対して適切に応えることができるようになることが大きなメリットです。
スマートスピーカー
ユーザーの命令を音声認識し、テキストに変換し、AIが自然言語処理してから音声で返答を出力するスマートスピーカーは、コールセンター出の応答や、病院でのカルテ作成、議事録作成などで活用されています。その他、一般家庭にも導入が進んでいます。ビジネスにおいては、会議室の予約や利用状況の確認などにも役立てられ、生産性の向上に一役買っています。
各業界でのAI活用事例
様座な業界でAIが活用されています。AIを活用することで、業務の負担軽減や労働力不足の解消につながり、業務が効率化できます。また、高い精度で分析が行えることも、企業にとっては大きなメリットです。
ここでは、代表的な5つの企業の事例をご紹介します。
製造業
製造業の中でも、タイヤ業界ではAIの導入が進んでいます。某大手タイヤメーカーでは、1990年代後半からタイヤ生産システムにICTやAIを導入し、品質向上を図ってきました。最近では、消費者向けにAIを用いた診断サービスを開始したり、完全自動化タイヤ成型システムを開発したり、積極的活用されています。
建設業
深刻な人員不足で、次世代の担い手の確保や生産性向上が課題の建設業では、AIを活用し無人施工ができるシステムの開発やAIを搭載したロボットの導入が進んでいます。走行制御システムで重機が自律走行したり、人や物の動きをICTで取得して本社に情報を送ったりなどの形で活用されています。また、3D可視することで状況を把握し、現場に人がいなくても作業を進めることも可能になりました。
医療
医療では、予防・診断・治療の3分野でAIの導入が進められている他、ゲノム医療や医薬品開発をいった研究開発においてもAIの活用が進んでいます。民間の医療現場では、画像による診断の支援が頻繁に活用されています。CTやMRIでの検査をAIが支援することで、多くの患者が適切な医療を受けることが可能です。そして、医療従事者の負担軽減にもつながっています。介護施設では、入居者向けに行動のモニタリング、杖や傾聴ロボットの実用化が進んでいます。
金融業
金融や保険業界では、主にクレジットカードの不正利用の検知、株価の予測などにAIが活用されています。大手のクレジットカード会社では、年間に2兆円を超える不正取引の被害を未然に防ぐことができたとの事例も報告されています。クレジットカード発行や融資などにも、AIの技術が用いられている他、保険会社では人手を介さずに最適な保険の提案を行うサービスも行われています。AIによって資産運用が自動化され、投資の初心者でも資産運用が可能になっています。
販売業
アパレルなどを中心に、ベテラン社員のノウハウをAIに学習させることで、膨大な購入データや顧客の嗜好を把握できるようになり、経験の少ない担当者でも消費者が満足できる提案を実現できるようになっています。消費者がオンラインで閲覧したコーディネートからファッションアイテムを検出し、保存したり購入したりできるサービスの他、選んだアイテムと似ている商品を検索できる機能もあります。
家電業界では、AI活用して倉庫業務の効率化サービスも行われています。過去の州品作業の結果を読み込ませることで、作業効率の最適化を繰り返し、州品作業時間の短縮にも成功しています。
まとめ
人的労働に対するこだわりなどによる抵抗感や資金の問題もあり、AIの導入がなかなか進んでいない現状ではありますが、今後も進化していくことは確実だと予想されています。日本はテクノロジーの進化とともに成長してきた国でもありますので、元々AIを柔軟に受け入れる環境は整っているとも言えます。IT技術の進化により、身近なものとなってきているAIですが、企業の導入に関してはまだ課題や高いハードルがあることと思います。
導入を検討されている企業は、導入に当たっての目標を設定し、そのための人材を育成し、しっかりと準備を整え、企業の生産性の発展に役立てていただけることを願っています。