中小企業を経営されている社長の皆さんは、日々の業務に追われ、様々なプレッシャーと闘っていることと思います。経営が順調でも、それがずっと続くとは限らないので常に不安を感じてしまうという人も多いでしょう。経営が軌道に乗っていなければ、尚更です。この記事では、会社の経営を行なっていくうえで大切な中小企業の社長の役割や心構え、姿勢などについて解説します。
社長の仕事や役割とは?
中小企業の会社経営において、社長の仕事は非常に重要です。社長が本来なすべき仕事や役割を遂行しなければ、会社は衰退してしまいます。
では、そもそも社長とはなんでしょうか。「社長とはなんですか?」と尋ねられたら、皆さんならどのように答えますか?
社長とは一言で言うと、『自分の会社の代表役を担う役職』のことです。つまり、会社の管理をする人、即ち会社内部の業務執行に関する責任者のことです。
社長の仕事は多岐にわたりますが、社内の業務執行に関する仕事をいかに達成できるかどうかが会社の成長及び発展において重要なポイントです。中小企業の成長は、社長の仕事で決まると言っても過言ではありません。
会社の顔として対外的な交渉を行わなければならず、社内や業務において様々な場面において判断や決定を下さなければならないことも多いでしょう。決断の質は社長の脳力が大きく左右します。そして、社長の能力は日々の仕事の質で決まります。つまり、社長の仕事の質が、会社の業績に大きく影響するのです。
また、社長の役割の中で重要になるのが、経営=マネジメントです。経営とは文字どおり営みを続けることなので、企業の永続性を確立させることこそが社長の最も重要な役割と言えます。
企業の永続性を確立するためのアイデアや課題を具現化したり解決したりすることが社長の役割であり、重要な仕事です。
設定した目標やゴールに向かって、会社の業績を上げ成長するために、社長として取り組むべき5つの仕事を、1つずつ解説します。
運営方針や経営戦略を決める
社長の仕事1つ目は、会社の経営方針や経営戦略を決めるということです。企業のトップである社長は、会社を存続させ、発展させていくために運営の方針や経営においての戦略を決めることが大切です。そして、その方針や戦略は時代のニーズに合ったものでなければなりません。時代に合っていなければ、会社が路頭に迷いかねません。
小規模な企業の場合は、社長自らが営業に出ることもあるかもしれません。しかし基本的に社長は、社員が動いて利益を上げる仕組みや構造を考えるのが仕事です。
会社の進むべき未来のための運営方針や経営戦略を決めるためには、社長の強い意志と決断力が求められます。もちろん社長一人で仕事をしているわけではないので、会社の役職者や部下の意見を聞いたり相談したりすることも大切です。しかし、最終的な決断は社長が行なわなければなりません。そのために常時アンテナを広げ、時代の空気やニーズを読み間違えないような努力が必要です。
目標を設定する
会社の運営方針や経営戦略を立てたら、次にそのための目標を設定しましょう。会社の成長は目標に対して動くことから始まります。したがって、会社の目標を設定することも社長に欠かせない仕事の1つです。
目標がなければ、行き当たりばったりの経営になり、成長どころか衰退を招く要因になりかねません。また、目標を立てても、その目標設定が誤っていたら、それも会社の衰退につながります。
目標には短期のものと長期のものがあります。業績に関すること、人材に関することなど内容も様々です。しかし、どの内容だとしても目標は会社の今後に大きな影響を与えるので、目標の設定は会社の成長にとって非常に重要です。
しかし、目標設定と言っても、何を基準にすればよいのか迷ってしまうこともあります。会社の目標設定において欠かせないのは、『利益』です。売上目標など利益に関することは、会社の拡大において重要です。利益は会社の成長に不可欠であり、利益が出なければ成長投資が鈍化し、社員の生活水準を上げることができません。
期限を決めて、その期間内に目標とした利益を生み出すことで次への投資を行ない、会社を成長させたり社員や株主に還元したり、会社に必要な資金の調達ができます。
また、目標達成のためには社員の働きや協力が不可欠です。社員に目標を理解してもらい、納得してもらうことで、会社一丸となって目標に向かって邁進することができます。
計画を作成する
目標を設定したら、その目標を達成するための計画を立てましょう。計画作成において重要なのは、目標達成のために実効性のある内容にすることです。実効性のない『絵に描いた餅』のような計画では、現実性がないため実現することも難しく、会社の成長や発展につながりません。
それでは、実効性のある計画を作成するためには、どのようにしたらよいのでしょうか。それは、現状をしっかりと把握し、現状と目標の間にある経営課題をあぶり出し、「どうやって経営課題を解決したらよいのか」「経営課題をいつまでに達成するのか」といった具体的な計画を慎重且つ詳細に検討することです。会社の役職者や専門家の意見を聞いたり、一緒に考えたりするのも有効でしょう。
たとえば、現状の利益が目標とした水準に達していなければ、利益を上げるために改善や解消すべき課題を分析する必要があります。次に、計画を作成したら実行に移し、効果を検証したり必要に応じて計画を修正したりしながら、目標達成に向けて改善していくのみです。
計画は、作成することも大切ですが、作成して終わりではありません。実行することこそが最も重要です。計画の作成と実行を推進することこそが社長の仕事です。確かな計画と実行こそが、中小企業の成長や発展には欠かせません。
会社にとって最良の未来を示す経営改善計画の作成と計画実行の推進こそが、社長にしかできない役割であることを自覚しましょう。
会社全体を把握・管理する
部下に仕事を任せることも必要であり大切なことですが、社長は社員に任せきりにせず会社全体をしっかりと把握し、管理しなければなりません。社長から言われなくても社員一人ひとりが自分で考え、意欲を持って仕事をすることが会社の発展には必要です。しかし、社員が自分勝手に動いたり、判断を誤ったりすることで会社に悪影響が及ぶ場合もあります。
社長は、会社がきちんと機能し、正しい方向に進んでいるか否かの現状を、常に正確に把握しておく必要があります。もし間違った方向に進んでいるなら、軌道修正しなければなりません。ただし、細かい部分にこだわりすぎることで大事なことを見逃したり、タイミングを失ったりすることもあるので注意が必要です。
社長が常に会社全体の様子を見て回ることは不可能ですので、会社の状態を把握するためには各部署からのこまめな報告を受けるよう風通しのよい社内環境を整えたり、報告のシステムを構築したりすることが求められます。
人材や後継者を育成する
社長の仕事は、経営に関することだけではありません。人材や後継者の育成も大事な社長の仕事です。人材や後継者が育たなければ、会社を永続的に続けることは不可能だからです。
しかし、社長自らが社員一人ひとりに細かく指導を行なうのも、もちろん限界があります。社長が細かく指導をするのではなく、管理職が社員教育をしっかりとできるよう育て、社内の指導体制のシステムを確立することが有効です。社長は人材育成の方向性や予算などに関して確認し、指示や承認を行ないます。
尚、後継者は会社の存続を左右する重要な存在であるため、後継者の育成は様々な関係者と連携を取りながら社長自らが行い、社長の思いも含めて伝え、指導するようにしましょう。
社長に求められる姿勢とは
社長がやるべき仕事について解説しました。
ここからは、企業を経営するにあたって大切な社長の姿勢について考えてみたいと思います。
会社の経営は、利益を上げることが大前提です。しかし、ただ利益が出ればそれでよいわけでもありません。利益が出ればなんでもよい、ただ儲けることしか頭にないといったような社長は、『コンプライアンス違反』や『架空取引』『不正計上』といった事態を引き起こしやすい傾向にあります。
また、会社において責任を取らなくてはならない立場でありながら責任を人に擦り付けたり、義務を果たさずに権利ばかりを主張したりするような無責任な姿勢では、社員は社長を信頼してついてくるわけがありません。
社長も人間なので完璧ではないはずです。失敗や間違いを犯すこともあるでしょう。自分のことを棚に上げても社員に言うべきことや場面があるかもしれません。しかし、言動と行動があまりにもかけ離れていたり、言うことがころころ変わったりするようでは、社員は社長を尊敬できません。尊敬できる社長であればこそ、社長のために働きたい、頑張りたいという意欲につながるはずです。
基本的には、社長は社員の前では弱いところは見せず、完璧であることを目指すべきです。しかし、完璧を目指すがあまりに人間味がなければ社員の支持を得ることはできません。社長は人気商売ではないので、社員の機嫌を取り、人気を得ようとする必要はありませんが、社員に尊敬や信頼をされるべき態度を心掛けることが大切です。
言ったことを実行する『有言実行』、決めたことは最後までやり切る『意志の強さと実行力』、間違いに気付けば、すぐに軌道修正する『判断や行動の速さ』など、仕事に真摯に取り組む姿勢や態度を社員に行動で見せましょう。
社員は普段から社長をよく見ています。社員に働かせ、自分は悠々とふんぞり返っているのではなく、率先して働く姿勢、社員に労いの言葉を掛けるなどの振る舞いが、社員の心には響くはずです。
トラブルなど不測の事態が発生した時やピンチの時、社員は普段以上に社長を見て、頼りにします。不測の事態が起こったときこそ社長がしっかりと判断をして指示を出し、会社一丸となって乗り越えることで、ピンチをチャンスに変えることができます。そういう体験こそが会社のチームワークを高め、成長や発展につながります。
社員に信頼される社長像を自分の中で描き、実現できるよう努力しましょう。
まとめ
社長とは、会社の代表を担う役職です。一般的に社長の仕事は、会社の運営方針や経営戦略を決定したり、目標設定や目標達成のための計画作成をしたりすることです。そのために人事や後継者の育成に加えて、資金繰りなど多岐にわたります。もちろん責任も非常に重い立場であり、予期せぬ事態に見舞われることもあるでしょう。
その分、やりがいや目標を達成した時の達成感はとてつもなく大きいはずです。社長は自らの立場や役割をしっかりと自覚し、管理職や社員、時には専門家や取引先など様々な立場の人達の協力を得ながら、永続的な会社経営を目指しましょう。