中小企業へデジタル活用やトレンドを発信するメディア

トレンド

中小企業の社長が今後注目すべきビジネスキーワード

日本の企業の中で99%を超える中小企業。7月20日の“中小企業の日”にちなみ、株式会社朝日広告社が行なった「中小企業及びスタートアップ企業の課題等に関する調査」で、中小企業を経営する皆さんが現在注目しているビジネスキーボードが選ばれました。上位3つは“AI(人工知能)”“SDGs”“カーボンニュートラル”でした。この3つについては以前から注目が高まっていて、すでに導入や取り組みを進めている企業も多いのではないでしょうか。今回は、4位以降のキーボードの中から、いくつかピックアップして解説します。

今後注目すべきビジネスキーワード

“AI(人工知能)”“SDGs”“カーボンニュートラル”に続いて選ばれたビジネスキーワードは、以下のとおりです。
4位 サブスクリプション…19.3%
5位 DX…18.3%
6位 メタバース…17.2%
7位 VR(仮想現実)…16.6%
8位 ダイバーシティ…9.5%
9位 Z世代…7.6%
10位 マーケショングオートメーション…6.8%

皆さんが注目しているキーワードはあったでしょうか。4~10位の中から、今回は“サブスクリプション”“メタバース”“ダイバーシティ”の3つをピックアップし、解説します。

サブスクリプション

サブスクリプション(Subscription)とは、商品の購入代金やサービスの利用料を毎回支払うのではなく、所定の料金を支払い、商品やサービスを一定期間、自由に利用できる仕組みです。元々は新聞や雑誌などの購読予約がサブスクリプション方式の主なもので、会員制サービスの会費なども含まれます。

サブスクリプションは定額制サービスの一種ですが、厳密にはサブスクリプションと定額制には少し違いがあります。月額○○円などの定額制は、料金を支払うことに対し、商品を提要するという仕組みですが、サブスクリプションは顧客との関係性を継続することをより重視しています。

サブスクリプションは、 “無料お試し期間”や“休止制度”などを設けたり、料金プランの充実を図ったりなどの工夫をしながら、利用者との関係性を継続するためのサービスを展開しています。そして、定額制は製品やサービスを利用することに対して所定の金額を定期的に支払うシステムですが、サブスクリプションは利用者のニーズを重視し、応えられるような価値を提供しています。

基本的には、料金を支払っている期間は自由に商品の購入やサービスの利用ができますが、契約が終了すると利用できなくなります。最近は“サブスク”と略され、さまざまな業界で取り入れられています。代表的なものは、音楽や動画の配信サービスです。

サブスクリプション型の音楽配信サービスでは、一定期間の利用料を支払うことで、サービスに登録されている音楽が聴き放題になります。動画配信サービスでも、月額料金を支払うと、登録されている映像コンテンツがいくらでも鑑賞できるサービスです。

その他、ソフトウェアをサブスクリプション形式で提供するサービスや、クラウドサービスなど、特に、データやソフトウェアを扱うデジタル分野を中心に展開されていましたが、最近では自動車や食品、アパレルなど、デジタル以外の業界でも広く取り入れられています。

自動車業界では、カーシェアリングサービス(カーシェア)が注目されています。若い人たちの車離れが進んでいますが、各個人のニーズに応じた車に乗ることができ、車の維持費や車庫代などの負担がないというメリットがあり、人気を呼んでいます。

食品業界では、月額の利用料を支払い、自宅に宅配で食品が届くサービスを展開しています。コロナ禍で、自宅で料理や食事を楽しみたい消費者向けに厳選された食材や料理キットが届くサービスの需要が高まっています。

アパレル業界では、冠婚葬祭などのフォーマルな場で着用する洋服の他、常にトレンドを重視したファッションを着用したいというニーズに応えるため、好きな服を好きなときにレンタルできるサービスが人気を集めています。プロのスタイリストに、自分にある服を選んでもらい、毎月届くというサービスもあります。

ライフスタイルの変化により、ものを所有することから利用することへ少しずつ移行しています。企業においても、商品などを保有するよりも利用することで、経費削減にもつながるメリットがあることから、今後はさらに多様化し、数多くの分野に拡大していくことが予想されています。

メタバース

6位に選ばれた“メタバース(Metaverse)”とは、“Meta(超越)”と“Universe(世界)”を組み合わせた造語で、オンライン上に3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)で構築された仮想空間を意味します。それぞれのユーザーが単独で仮想現実の体験をするのではなく、複数のユーザーと同時に同じ空間を共有し、相互にコミュニケーションを取ることが可能です。

メタバースという言葉を耳にするようになったので最近ですが、1992年に米国の作家ニール・スティーヴンスンが発表したSF小説『スノウ・クラッシュ』に登場した仮想空間サービスの名前が由来になっています。2000年代に入ると、メタバースの先駆け的存在と言える“セカンドライフ”というサービスが始まりました。バーチャル空間で現実とは異なる日常を過ごすことができ、米ドルに換金可能な独自通貨も発行され、経済活動が活発になり、多くの企業が参入するようになりました。

VR/ARの技術向上によってリアリティのある仮想空間が実現可能になり、日本でも“PlayStation Home”や“はてなワールド”、“アメーバピグ”など、メタバースと同じようなサービスが始まりました。その後も、『どうぶつの森』や『FF14』などのゲームや、『サマーウォーズ』や『竜とそばかすの姫』などのアニメ映画で活用されています。

現在のメタバースの主流は、オンラインゲームのようにクリアできる条件やミッションに則ってプレイするようなものではなく、日常生活を送るように仮想世界で自由に過ごせるようなものになっています。

メタバースの特徴には、グローバルな活動と非日常体験ができるということがあります。オンライン上で構築されているメタバースには、国教に制限されないグローバルな活動をすることが可能になっています。つまり、自宅にいながら全世界のユーザーと同時に接続できるため、国際交流を楽しむことができます。

また、メタバースは、3DCGで構築された仮想空間なので、物理法則にとらわれず自由に飛びまわったり、形を変えたりなどの体験をすることも可能です。もちろん現実と同じように過ごすことも可能で、まるでアニメのように現実世界の常識に縛られない活動を楽しむことができるのが魅力です。

なぜ今メタバースに注目が集まっているのでしょうか? それはスマートフォンの普及やインターネットの高速化、5Gモバイル通信などの容量増加や高速化など通信技術の発達が関係しています。XR技術の進化により、VRゴーグルを装着して意識ごとメタバースに入り込むことができるようになりました。

さらに、アバターを通じて仮想空間上の街を歩いたり、建物に入ったり、移動する感覚をリアルに体験することも可能です。VRによるコミュニケーションは、実際に体験しているようなリアルな感覚も味わえます。

そして、新型コロナウイルスの影響も理由の1つに挙げられます。コロナ禍のため家で過ごす時間が長くなり、リモートワークやオンラインイベントなどが普及したことで、インターネット上でも人間らしい交流を求め、メタバースによるコミュニケーションの需要が高まっています。

メタバースのビジネスの活用例としては、バーチャル店舗やオフィスがあります。そして、エンターテインメントとしては、ゲームやライブが代表例です。今後は世界の観光地を再現したメタバース観光や、臨場感のあるメタバーススポーツ観戦などにも期待が寄せられています。

メタバースの歴史はまだ浅く、発展途上の分野と言えます。まだまだ課題が多くありますが、今後の発展に期待が寄せられています。何より、距離の制約なく交流の幅が広がったり、日常と非日常の両方で活用できたり、リモートワークなどにも活用できるなどたくさんのメリットがあるので、要注目の分野です。

ダイバーシティ

8位の“ダイバーシティ(Diversity)とは、多様性を意味する言葉。年齢や性別、人種や趣味嗜好、宗教に至るまで、さまざまな属性の人達が集まった状態を指します。現代社会では、多様性を認め合おうという論調がよく聞かれますが、ビジネスにおいては、多様な人材を登用し、各々が活躍することで組織の生産性や競争力を高めるという経営の戦略の1つとして注目されています。

“ダイバーシティ&インクルージョン”という言葉もよく聞きますが、“インクルージョン(Inclusion)”は、受容という意味で、多種多様な人々が互いの間方の違いや個性を受け入れながら、ともに成長していくことを指します。ただ多様な人材が集まるだけではなく、共存や共栄するということです。

そして、“ダイバーシティ経営”とは、経済のグローバル化や少子高齢化が進む現在において、企業の競争力を強化するため、女性や外国人、高齢者、障がい者など、多様な人材を活かし、各自の能力を最大限に発揮する機会を設けることで、イノベーションにつなげるという経営の考え方です。

ダイバーシティが経営戦略において注目される理由としては、労働環境の変化や個人の価値観が多様化してきたこと、さらに少子高齢化社会による労働人口の減少などの現代社会の特徴が背景にあります。

時代とともに働き方やキャリアに対する考え方も多様化し、今は自分のやりたい仕事を求めて転職する人も増えています。こうした時代背景を踏まえて、企業は多様化する人材のニーズに応えて人材獲得のためダイバーシティを実践し、採用力を高めていく必要があります。

日本においては、先進国の中でもまだまだダイバーシティが根付いていない現実があります。日本でも少しずつ多様性の考え方は進んできてはいますが、考え方や物ごとの判断基準として旧態依然とした価値観が拭い切れていない現実があります。

ダイバーシティ経営を実践するためには、働き方改革が密接に関係します。つまり、働き方の見直しや生産性の向上や適性の評価が必要不可欠です。今後、働き方改革が進めば、以下のようなメリットが期待できます。

・ワークエンゲージメントの向上

ワークエンゲージメントは、仕事に対する充実感や満足度を表します。リモートワークなど柔軟な働き方を選択できればワークエンゲージメントを高めます。また、さまざまな人材の交流が生まれ、互いに刺激を受け合い、モチベーションアップにもつながるでしょう。

・人材のリテンション

多様な人材を登用し、活躍する機会を提供することで、働き方にも多様性が生まれます。その結果、優秀な人材が流出することを防ぐ効果があります。働き盛りの優秀な人材が、育児や介護などの事情で退職や転職してしまうことがないよう、労働環境を整備することで、人材確保につながります。

まとめ

「中小企業及びスタートアップ企業の課題等に関する調査」において選ばれたビジネスキーワードの中から、“サブスクリプション”“メタバース”“ダイバーシティ”の3つについて解説しました。
3つとも聞いたころはある言葉だけど内容がよくわからないとか、導入を検討しているけどどのような方法がよいのかわからないなどという企業が多いかもしれません。
ぜひ、この記事を参考にしていただき、今後の企業の発展のため、導入を検討したり、できそうな部分から少しずつ取り入れて実践したり、各企業で有効に活用していただければ幸いです。

関連記事

ページTOP