中小企業にとって、大切なものとは何でしょうか? 大切なものは1つではなく、たくさんあります。何を大切にすべきか、企業によっても異なるでしょう。
しかし、大切なものの中には、間違いなく人材が入るはずです。どんなに優秀な社長でも、1人で会社の業務を行なうことは不可能です。社員がいなければ会社は成り立ちません。
世界人口が増加の一途を辿る中、日本は少子高齢化に歯止めがかかりません。少子高齢化の影響により、生産年齢人口は減少しています。優秀な人材を採用し、即戦力に育てることは企業にとって大切なことですが、今やどの企業も人材の確保に苦労しています。
中小企業を経営される皆さんは、社員を大切にしていますか? 社員の気持ちを考えていますか? 人材採用難が課題になっている今、社員を大切にしなければ、優秀な人材を確保することは、ますます困難になります。
この記事では、中小企業で働く社員の気持ちにスポットを当てて、社員に喜ばれる企業とはどんな企業か、解説します。
日本企業は社員の満足度が低い?
会社に対する従業員の満足度が高ければ、会社の生産性を高め、業績の上昇につながったり、企業イメージが上がり優秀な人材確保に結び付いたりします。しかし、欧米と比較すると日本には従業員の満足度が高い会社は多くありません。
社員の満足度が低い企業には、以下の特徴があります。
自主性が疎んじられる風潮
日本の中小企業では、社員が自主的に動きにくい風潮が根強く残っています。社員自らが、自分がやるべきだと考えたことを自主的にやろうとすると、上司から止められるというようなケースが多くあるからです。
背景には、“自主的”という言葉に対する解釈が、社員と上司とで異なっているということがあります。多くの上司は部下に自主的に仕事をしてほしいと思っています。それは、自分がやるべき目の前の仕事を、周囲から言われることなく率先して取り組み、さらに先のことにも目を向け、率先してやってほしいというような意味です。
したがって、社員が考える、自ら考えて動くという意味の自主的とは異なり、社員が自主的に動こうとすると、上司にとっては勝手に動かれて困るという認識になるわけです。このような風土が根強いので、日本では自主的に動こうとする人材が育ちにくい傾向があります。
曖昧な評価基準
日本の中小企業の中には、社員の評価基準が曖昧な企業が多くあります。明確な評価基準がないと、社員の中で不公平感が生まれたり、自分が正当に評価されていないと疑心暗鬼に陥ったりする状況が生まれます。そうした状況が不満やモチベーション低下につながり、退職や転職理由になるのです。
しっかりと市が評価基準に則って、公平に人事評価や査定がされていれば、社員の満足度は上がるはずです。
不適切な人材配置
欧米の企業では、採用前に社員がやりたいことや得意なスキルを考慮して採用を決めることが多いのに対し、日本の企業は新卒者を採用する際、総合職として採用し、採用後に人事配置を決めるという企業が多いです。
自分がやりたい、得意だと思っている仕事をすることができず、全く畑違いの部署に配属された場合、何事も經驗だと前向きに捉え、取り組むことができる人はよいですが、自分の希望が叶わない、苦手な仕事をさせられて大変だというようにマイナスに捉えてしまうと、仕事に対する意欲が失われてしまいます。
社員が満足する企業とは?
日本の中小企業が、社員の満足度が低い理由について解説しました。つまり、自主性を尊重し、評価基準を明確にし、適切な人材配置を行なえば、社員の満足度は高くなるということが言えます。
具体的に、社員の満足度が高い企業の特徴を解説します。
社員に権限が与えられている
仕事に意欲ややりがいを持っている社員にとっては、権限が与えられることで、さらにモチベーションが上がります。社員が、ある程度自分で仕事のコントロールができ、仕事の進め方を決めることができる企業は、社員の満足度も高い傾向が見られます。
その分、責任も生じますが、人任せ、上司頼りではなく、自分で考えて責任感をもって仕事ができる社員の育成にもつながるはずです。そして、任せてもらえているということが、自信や意欲になります。
明確な評価基準がある
正当な評価がされていないと感じれば不満になり、退職理由につながります。人は自分を客観的に見ることは難しいので、他人の評価とはズレが生じるのはよくあることです。しかし、評価基準が明確で、社員に納得のいく説明ができれば、社員は自分に足りない点に気付き、努力をしようという気持ちにつながります。
しかし、評価基準が曖昧であれば、「どうして自分は評価してもらえないんだろう?」「あの人は上司に贔屓されているのではないか?」といったような憶測を生みかねません。
評価基準をしっかりと決め、社員にも周知することで、社員は評価されていない理由がわかり、具体的な目標ができます。
ワークライフバランスがよい
ワークライフバランスがよく、福利厚生が充実している企業は、社員の満足度が高い傾向にあります。仕事の面だけではなく、社員のプライベートも含めてバックアップする制度ができる企業は、社員にとって喜ばれます。
リモートワークやワーケーション、副業制度、男性の育児休暇取得など、社員にとってメリットや自由度が大きい働き方や制度を導入している企業は、社員が働きやすく、社員から感謝されるでしょう。感謝の気持ちがあれば、会社のために頑張りたいという気持にもつながります。
世代よる考え方や価値観の違い
ここまで、一般的な社員の満足度について解説してきました。しかし、会社にはいろいろな社員がいます。社員全員が同じ考えであるとは限りません。むしろ、同じ考えであることはあり得ません。もちろん一人ひとり考え方や価値観は違いますが、性別の違いや既婚者と独身者の生活環境による違いなどもあるでしょう。
中でもベテランの世代と若い世代とでは、感じ方や考え方の違いがわかりやすいでしょう。育ってきた時代が違うので、考え方が異なるのは当然と言えます。
中小企業には若い社長も多くいますが、経営者の高齢化も指摘されています。現在と比べて物が不足していた1960~1970年代に育った高齢の経営者と、ものや情報にあふれた現代社会で育った若い社員とでは、考え方や価値観が違うのは当然です。
ものが不足していた時代に育った中高年世代は、人間関係や意義ややりがいなどの内面的なものよりも、達成感や快楽などの物理的で目に見えやすいものを仕事に求める傾向があるようです。現状にないものを求める傾向とも言えます。
一方、若い世代は、幼少期の頃から生活に不自由を感じることがほとんどない生活を送ってきたので、会社ではすでに確立されルートに沿って仕事をしていくというスタイルが多く見られます。必死に働かなければ生きていけないような危機的状況を経験していない人がほとんどなので、充実した人生を生きたいといったような内面的なところに価値観を求める傾向が強いです。
中高年世代は終身雇用が多い時代に育ち、多少の嫌なことがあっても退職を選ばず頑張ってきた人が多いのに対し、若い世代は理想の働き方ややりがいを求めたり、人間関係に疲れたりなどの理由で退職を選ぶ人が増えています。
若い世代のこうした傾向を理解したうえで、どんなことにやりがいを見つけて仕事をしてもらえるのか、何を大切にし、どんな状況であれば満足するのかということを考え、人材育成に取り組むことが必要ではないでしょうか。
社員の満足度と顧客や取引先の満足度
社員は満足する企業の特徴や、世代による満足度の違いについて解説しました。社員の満足度が高い企業を目指すことは大切な課題の1つです。社員の満足度が高ければ、生産性の向上につながり、業績向上にも影響があるということもお話ししました。
当然ですが、企業は社員のためだけにあるのではありません。顧客や取引先の満足度も非常に大切です。社員の満足度は高いのに、顧客や取引先の満足度が低ければ、業績の向上は難しいでしょう。
しかし、社員の満足度が高ければ、顧客や取引先の満足度の向上にもつながります。理由や仕組みは以下のとおりです。
・社員一人ひとりが自分の仕事に誇りや喜びを感じながら仕事をしていれば
1. 労働の生産性が上がる。
2. 優秀な人材が定着する。
3. 顧客へのサービスが向上する。
・顧客の満足度が上がると
1. 競合優位性が得られる
2. 売上が上がる
3. 充実した取引ができる
業績が上がると
1. 社員に還元できる
2. 教育制度が充実する
3. 労働環境の改善ができる
顧客の満足度が上がれば、業界の中で競合優勢が得られ、売上が上がったり取引が充実したりすることにつながり、業績も向上します。
また、業績が向上することで、社員への還元や研修制度の充実、労務改善などが可能になり、社員満足度もさらに向上します。社員の満足度を高く維持できれば、優秀な人材の流出を防ぐこともできます。社員の出入りが激しければ、安定したサービスの提供が困難になります。人材採用や育成にかかるコストや時間、労力もかかってしまいますので、非常に大切な要素であります。
以上のサイクルがうまく回っていけば、社員が生き生きと働き、商品やサービスへの顧客満足度が上がり、業績の好調も維持できるでしょう。
まとめ
社員の満足度が高い企業について解説してきました。社員の満足度が高い企業の特徴について理解していただけたと思いますので、ぜひ参考にして、満足度が高い企業を目指してください。
同時に、社員の満足度を上げる大切さについても理解していただけたと思います。社員の満足度が上がることは、たくさんのメリットがあります。多くの物事にはメリットとデメリットがあるものですが、社員の満足度が高い企業にはメリットしかないと言っても過言ではありません。
社員の満足度と同時に、顧客や取引先の満足度も上げて、業績アップや会社の発展につながることを願っています。